- 日の出みりんコラム
料理で本みりんを使用する際、レシピ本などに「本みりん」と記載があるから、なんとなく使っているという方もいるのではないでしょうか。
本みりんを料理で使う理由は、いくつかの役割があるからです。本みりんが使われる理由を知ることで、料理に対する意識が変わることでしょう。そこで今回は、本みりんが持つ役割を6つ紹介します。
また、本みりんと同じくレシピに記されていることが多い『料理酒』についても解説しますので、本みりんと料理酒の違いが曖昧な方は、ぜひ参考にしてください。
目次
本みりんの6つの役割とは
本みりんは、食材にさまざまな効果を与える役割を持っています。本みりんの役割として挙げられるのが、主に以下の6つです。
・食材の臭みを取る
・食材の煮崩れを防ぐ
・コク深い味わいが出る
・まろやかな甘みを加える
・料理にてり・つやを加える
・うまみを染みこませる
この項目では、それぞれの役割を詳しく解説します。
食材の臭みを取る
本みりんは、魚や肉など食材の臭みを取る役割があります。それは本みりんがアルコール分を含む調味料だからです。アルコールの蒸発による共沸効果と、醸造成分によるマスキング効果が食材の臭みを和らげてくれます。
アルコールは、熱が加わると蒸発していきますが、このときに食材の臭みの元となる成分も一緒に取り除く共沸効果があります。つまり、食材に浸透したアルコールが加熱により臭みを食材から取り除いてくれるのです。
また、本みりんに含まれる様々な醸造成分や加熱により発生した成分などが臭みの元となる成分を覆い隠し、臭みを感じにくくさせるマスキング効果もあります。
食材の煮崩れを防ぐ
本みりんは、煮崩れ防止の役割もあります。本みりんに含まれる糖類とアルコールが、食材の形を保つからです。
例えば、じゃがいもは加熱すると、ペクチンという物質が溶け出して崩れやすくなります。本みりんに含まれる糖類やアルコールはペクチンを溶けにくくするため、煮崩れを防止することが可能です。
コク深い味わいが出る
本みりんは、深いコクやうまみを付けるのにも役立ちます。本みりんのコクやうまみの元となっているのは、原料である米が分解されて作られたアミノ酸や有機酸や糖類といった成分です。
このようなアミノ酸や有機酸にさまざまな種類の糖類が複雑にからみあい、食材そのもののおいしさを最大限に引き出します。
まろやかな甘みを加える
本みりんの成分には糖類が多く含まれています。ブドウ糖やオリゴ糖などの複数の糖類により甘みを引き出しているため、砂糖のような強い甘みとはまた違った、まろやかな甘みを感じられます。
また、芳醇な香りとエキス分によるうまみもあり、さまざまな調理に使われています。料理にまろやかな甘みやうまみを加えたいときに本みりんはおすすめです。
料理にてり・つやを加える
料理にてり・つやを加えるのも本みりんの役割です。料理にてり・つやを出すことで、見た目から食欲を刺激してくれます。本みりんに含まれる糖類が食材の表面に膜を張ることで水分を保持するため、食材にてり・つやが生まれ、見た目を良くしてくれます。
うまみを染みこませる
本みりんは、食材に味を染みこみやすくする役割もあります。本みりんに含まれるアルコールが食材に浸透する際に、他の調味料やうまみも一緒に食材に引きこんでくれるためです。
これに加え、本みりんに含まれるアミノ酸や糖類なども材料に染みこんで行くため、料理の味付けが早まるだけでなく、均一に味を染みこませることが可能です。
本みりんと料理酒はどう違うの?
本みりんは14%前後、料理酒は13%前後と、どちらもアルコールが含まれています。アルコールによる食材の臭み消しや、柔らかくする役割は、本みりんと料理酒のどちらにも共通するものです。食材の臭み消しや柔らかくすることを目的にするのであれば、本みりん、料理酒、どちらを用いても良いでしょう。
一方、本みりんと料理酒とでは異なる部分もあります。料理酒には糖類がほとんど含まれていません。
また、料理酒は、塩分を含む「料理酒(加塩料理酒)」と、塩分を含まない「料理清酒(非加塩料理酒)」に分けられます。料理に塩味を付けたいときは加塩された料理酒を使用するのがおすすめです。塩味ではなく甘みを付けたいときは、本みりんを使用すると良いでしょう。
種類別!みりん(みりん類全般)の正しい使い方
ここまで、本みりんの役割と料理酒との違いについて説明してきましたが、一般的にみりん(みりん類全般)として販売されているものは本みりん以外にもあります。みりんにはどのような種類があるのか、特徴と正しい使い方を紹介します。
本みりん
本みりんにはアルコールが多く含まれているため、料理の始めに使用して、加熱によりアルコールを飛ばす使い方をします。煮物料理で本みりんを使用する際は、出汁を沸かして、砂糖を入れるタイミングで本みりんを投入すると良いです。
また、料理で使用する前に、本みりんを加熱してアルコールを飛ばし、「煮きりみりん」にすることで非加熱調理にも使用できるようになります。
みりん風調味料
みりん風調味料は、本みりんの調味効果を追求して作られた調味料ですが、本みりんほどアルコールを含みません。アルコール分は1%未満であるため、アルコールを飛ばすために加熱する必要はありません。加熱しない料理でみりんの調味効果を付けたいときにも手軽に使えます。
また、アルコールを飛ばす必要がないことから、『料理のさしすせそ』の前後でも使えるため、味の調整にも重宝します。
■『料理のさしすせそ』とは
さ(砂糖)
し(塩)
す(酢)
せ(しょうゆ)
そ(味噌)
みりんタイプ調味料(発酵調味料)
みりんタイプ調味料は、本みりんのように多くのアルコールを含みます。加熱してアルコールを飛ばすためにも、本みりんと同じように調理の序盤で使用するのが基本です。
また、本みりんとは異なり、みりんタイプ調味料には塩分が含まれています。みりんタイプ調味料を使用する際は、塩やしょうゆは控えめに使用すると良いでしょう。
知っておくと便利!本みりんはこんなときにも役立つ!
煮物料理やてり焼きなど、さまざまな料理で活躍する本みりんですが、ほかにも多くの使い方ができます。日々の料理をより豊かなものにするためにも知っておきたい、本みりんの便利な使い方を紹介します。
ご飯を炊くときやすし飯を作るとき
時間が経って、ご飯の粘りや弾力がなくなってしまい、炊き立ての食感が楽しめないと悩んではいませんか。本みりんは、ご飯の炊き立ての食感を維持するのにも便利です。
ご飯はでんぷんが流出することで弾力の無い食感に変化してしまいますが、本みりんにはでんぷんの流出を防止する効果が期待できます。お米の周りをしっかりコーティングしてくれるため、長時間美味しいご飯を楽しむことが可能です。
本みりんをうまく利用するなら、ご飯を炊くときに、お米1号に対して小さじ2杯ほど、少量の本みりんを加えると良いでしょう。噛み応えのあるかたさに、粘りのあるご飯が炊きあがります。
すし飯を作るときは、すし酢を合わせるときに、煮きりみりんを大さじ1杯加えると香ばしい香りが出ます。
魚に焼き色をつけるとき
食材の焼き色は、メイラード反応とカラメル反応が関係しています。メイラード反応とは、本みりんに含まれるアミノ酸と糖類が加熱によりメライノジンという褐色物質を作ることです。カラメル反応は、糖類が100度以上に加熱されることで発生します。
メイラード反応やカラメル反応をうまく利用して、美味しそうな焼き色を付けるには、本みりんが便利です。豊富なアミノ酸や糖類により焼き色がつきやすくなります。魚に焼き色をつけたいときは、本みりんを利用してみると良いでしょう。
食材の塩カドや酢カドを抑えたいとき
料理を作っているときに、「しょっぱすぎる」「酸っぱすぎる」と感じたこともあるかと思います。このような塩カドや酢カドを抑えるには、本みりんがおすすめです。
本みりんには、うまみ成分や甘味成分が含まれており、さらに甘味成分によって塩味や酸味が減少する相互作用が働きます。塩カドや酢カドが立ち過ぎたら、本みりんを使うと、まろやかな味に持っていくことができるでしょう。
まとめ
本みりんには、臭みを取る役割、煮崩れを防ぐ役割、コク深い味わいを出す役割、まろやかな甘みを付ける役割、てり・つやを出す役割、味を染みこませる役割があります。
ほかの調味料では代用できない役割もありますので、必要に応じて本みりんを使ってみると良いでしょう。後半でも紹介したように、ご飯を炊くときや塩カドや酢カドを抑えたいときなどにもおすすめです。